入れ歯の患者学

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−入れ歯の患者学主催者−

歯周病の治療に関しては
目白若林歯科 歯周病研究所

重症な歯周病と入れ歯

 重症な歯周病により全ての歯、或は殆んどの歯を抜かなければならないような場合、通常は総入れ歯、或は大きい部分入れ歯が適用されます。そして、いずれを選択するかは、各々の歯根の周囲に残っている骨の量、歯の動きの程度、歯の位置異常、そして歯の傾斜などの病態(病的に変化した状況)により決まります。さらに、術者としての私が、とくに注目したいことがあります。それは、現在の上下の咬み合わせが上下・前後・左右(横)の関係が、患者さんご自身にとって適しているかどうかということです。即ち、上下の歯の咬み合せが顎関節と適切に調和しているかどうかということです。

 もし、この両者の関係が適切であれば、それを入れ歯に移行することで好ましい咬み合わせが構築されることになり、よい入れ歯が装着されることになります。尚、上記の両者にずれが認められる場合は新たに好ましい関係に導くことになります。
 以下に3種類の病態と治療方法さらに治療手順について3症例を提示し説明します。

症例 D1 部分入れ歯から総入れ歯への移行部分入れ歯症例

 重症な歯周病により、歯根周囲の骨が多量に吸収され、全ての歯を抜き総入れ歯と判断しても決して無暴な治療案ではないと思われる症例への対応について説明します。もし、数本の歯を残し、そしてある一定の期間部分入れ歯を活用し、その後経過をみながら総入れ歯へと移行する症例を考えてみましょう。
 その利点は、もし残した上下の歯同志が好ましい咬み合わせを有している場合は、それを部分入れ歯に同じように付与すること、さらに小さめの部分入れ歯から大きめの総入れ歯へと移行することで慣れやすいということです。或は、上下の咬み合わせに不調和が認められるときは部分入れ歯の型をとる前に調整することが必要です。

 このような治療手順を経て適用する治療案を部分入れ歯から総入れ歯への移行部分入れ歯といいます。この移行部分入れ歯を適用することで期待以上の効果が得られることをよく臨床で経験しています。
 この症例は下の歯の左右で5本、上の歯を左右で5本残して移行部分入れ歯を装着しました。その結果は、上の歯は3年後に1本抜き、4年後に2本抜き、さらに5年後に1本抜き、その抜いた歯の部位を部分入れ歯に人工歯を追加し、歯槽堤の成熟を行って総入れ歯になりました。ということは、上の移行部分入れ歯を5年使用したことなります。  尚、下の歯は16年経過した現在でも残した5本の歯と移行部分入れ歯により、楽しい食生活を営んでいる様子がうかがえます。

 このような好ましい結果が得られていることは、術者の私も想定外のことと満足しています。ところで、この予想外の好ましい結果が得られたことについて説明を加えます。
 入れ歯は咬んだとき、その力により動かないことがよい入れ歯の証です。そして、入れ歯が動かないための条件は歯槽堤という歯の無い部分とそれと接している入れ歯の裏側(両者の接している必要最小限の面積)が、限りなく密に平均して接していること、さらに残っている全部の歯と入れ歯が一体化していることによって安定が得られるわけです。即ち残っている歯と入れ歯が一体化しているために咬む力が加わっても残っている歯も入れ歯も動かないということになります。同時にこの安定化を期待するために上下の噛み合わせが顎関節と同調していることも必須条件となります。

1992.12
1995.10
2007.8 初診から15年後

まとめ

 患者さんご自身の有する上下の正常な顎関節の関係と、残した全ての歯の上下の関係を可能な限り一致させ、さらにその両者と部分入れ歯を融和させることにより、咬んだときに残した歯も部分入れ歯も、上下・前後・左右(横)に動じないような移行部分入れ歯を作成することが最も重要なことと考えています。
 そのような治療案、治療手順を経て、できる限り長い間使用し、総入れ歯へと移行することが移行部分入れ歯の指令となります。しいては、有益な食生活そして豊かな人生への営みに貢献できることを願っています。

症例 D2 抜歯と同日に仮の部分入れ歯を入れ、そして後日総入れ歯へと移行した症例

 全ての歯の抜歯が必要な場合、上下の歯の咬み合わせの関係を維持しながら、できる限り早い期間で総入れ歯を適用することが要求される症例です。上は全ての歯を抜き総入れ歯、そして下は3本の歯を残して部分入れ歯(コーヌス入れ歯)を適用しました。この項では、上の総入れ歯に的をしぼって紹介します。
 通常は、全ての歯を抜き仮の総入れ歯を入れずに抜いた部分(歯槽堤)の傷の治りを待って総入れ歯の型をとり、そして作成し装着します。ということは、歯の無い期間があまりにも長く生活に支障が及びます。例え仮の総入れ歯を入れる場合であっても好ましい上下・前後・左右の関係を付与するのに大変な作業が必要となり、そのための治療に要する時間や労力は想像以上です。

 術者の治療案は、ある一部の歯を抜き残した歯を基準にして、その日に仮の部分入れ歯を装着します。そして、抜いた部位の成熟(抜いた傷が治り形態が整う)を待ち、続いて残した歯を抜き、即日抜いた部位に人工歯を入れ、咬む機能を構築します。ということは、始めに入れた仮の部分入れ歯は、全ての歯の適切な咬み合わせを維持しながら、仮の総入れ歯へと移行します。そして、この仮の総入れ歯が十分満足のできる食生活を営めることを確認し、続いてその仮の総入れ歯と同じような最終的な総入れ歯を作成し装着します。その際、仮の総入れ歯から最終的な総入れ歯に入れ変えたとき、患者さんは全く気づかないようであればと願う一瞬です。こんなとき、患者さんは「思わず心が癒されたと感じるひととき」を味わって頂きたいと願っています。


2005.7

2005.9.21

2005.9.21

2007.8

2005.7.23

2005.7.21

2005.7.21

2005.7.21

2005.7.23

2005.9.7

2005.9.7

2006.2.15

まとめ

 人は「咬みたい」「美味しく味わいたい」そして「満腹感を得たい」という人間の抱いている咀嚼欲を満足させることを仮の総入れ歯に期待するわけです。それ故、その咀嚼欲という人間本来の願望を最終的な総入れ歯に魂をうつすが如く移行することを指標として総入れ歯を作成します。

症例 D3 すべての歯の抜歯と即日総入れ歯を適応する症例

 重症な歯周病により全ての歯を抜歯し、その日に総入れ歯を装着する症例に対する治療案と治療手順を説明します。総入れ歯になるような病状とは、残っている歯根の周りの骨はすでに歯を支えることが出来ない程吸収され、そして咬むことにより歯が動き、そのため適切な上下の歯の咬み合わせの関係が完全に失っている状態です。
 そのような場合、好ましい上下・前後・左右の歯の咬み合わせの関係を判断することが極めて困難となります。そのため、総入れ歯の咬み合わせの理論に沿って、上下の歯の咬み合わせの関係を導き出し総入れ歯を作成します。

 このような病状に対する総入れ歯を作成する手順は、通常であればまず数本ずつ抜歯し、そして、全ての歯を抜きその後1〜2ヶ月たって型をとり総入れ歯を作成し続いて口腔内に装着します。このような治療手順で治療を進めると、歯の無い期間が著しく長く、食生活のみならず日々の生活に大きな支障をきたします。
 そこで私はこのような日常生活に障害を及ぼさないために、全ての歯を抜歯し、その日のうちに総入れ歯を装着する治療法を提供しています。
 ここに提示する症例は、午前10時に来院し抜歯から一連の治療の流れを経て総入れ歯をお口の中に装着する時は、すでに午後9時30分でした。その後、抜歯後の傷の成熟を待ちながら、総入れ歯を調整し十分満足のいく食生活を営んで頂くよう努めています。


(1)治療開始日 2006.12.12 午前10時

(2)2006.12.12 午後9時
歯根周囲の骨が殆んど破壊され全ての歯を抜歯せざるを得ない重度な歯周病。 上下の全ての歯を抜歯しその日に上下の総入れ歯を入れ、満足した表情が伺える。

(3)治療前の正面

(4)
上の歯は6本、下の歯は9本残っている。 抜歯し即日総入れ歯を装着。
(もし、可能であれば、抜歯する日の数日前に1回来院し、上下の型を採り、歯科技工士と義歯の作製の準備をすることが望ましい)

(5)治療前の右側

(6)治療前の左側

(7)

(8)
下の歯を抜歯した直後で歯肉が凸凹しているため入れ歯が安定せず痛みがでたり出血が止まりづらかったり、また抜歯後の治癒が遅れてしまう。 入れ歯の適合や抜歯後の治りを早めるため歯肉を整え糸で縫うことが極めて重要である。

(9)

(10)
歯の動きが大きいため、噛み込むと正常な位置よりかなり沈みこんでしまう。そのため食事が大変、不便である。 下の歯の裏側に多くの歯石がついている。この歯石が骨を溶かす原因となる。

まとめ

 抜歯という治療行為は、多大な犠牲を払うことになります。とくに全ての歯を抜くということは、食生活のみならず、日常生活に大きな被害を被ることになり、さらに顔貌の変化は想像を絶するほどです。たとえ、1本の前歯を失っただけでも鏡を見ることさえ避けたくなるものです。
     「もし、私が患者だったら
               何をしてもらうと満足するでしょう」

その答えを、患者さんに提供することが私の使命です。

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